ザ・ビートルズ『リボルバー』
The Beatles『Revolver』
―33回転目の真実―
“今、何回転目?”
“そうね!だいたいね~”
レコードの針は降りたままだった。今日はビートルズのメンバーに、「リボルバー」についてインタビューをする日。緊張が徐々に高まってきていた・・・
―――まずは、リンゴからインタビューをさせて頂いた。
私「初めまして、リンゴ」
リンゴ「やあ」
私「リボルバーは最高のアルバムですね」
リンゴ「ありがとう」
私「あなたが歌っている“イエロー・サブマリン”もポップで気持ちイイですね」
リンゴ「あれは、ポールが書いた曲なんだ」
私「そうなんですね。あなたのボーカルがすごくマッチしていると思います」
リンゴ「それは、よかった。あ、ちょっと用事を思い出した。すまないけど先にほかのメンバーの処へ行ってくれないか?僕はまた後で、いつでもいいからさ」
私「あ、わかりました。じゃ後で!」
次はジョージのもとに向かった。
私「こんにちは!ジョージ。初めまして」
ジョージ「こんにちは。初めましてだね」
私「今作にはあなたの楽曲が3曲も入っていますね。今、かなりノッテいますか?」
ジョージ「いや、いつも通りだけど。まぁ、たまたまだよ」
私「“タックスマン”はすごくファンキーでノれる曲ですし。“ラブ・ユー・トゥ”はインド風と言われているようで、この曲は60年代後半のプログレッシブ・ロックにも繋がる構成になっていると思います。“アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー”は70年代のグラム・ロックにも通ずるというか、そのままいけば煌びやかな80年代への系譜にもなっているかと思いました」
ジョージ「ふーん。まぁ君の言っていることが正しいのかよくわからないが、クールに決まっていればOKだよ」
その時、部屋のドアが開き、ポールが顔を覗かせた。
ポール「いつまでジョージと話をしているつもりだい?もういいだろ。はやくこっちに来なよ」
私「あ、でもまだ…」
ジョージ「いいよ、別に。ポールのとこ行きなよ」
私「あ、ありがとうございます。ではまた」
ジョージ「オッケー。バイバイ!」
私「どうも。初めまして、ポール」
ポール「ハーイ!元気にしていたかい?」
私「はい。げ、元気ですよ!」
ポール「そうか!また日本に行くからね!」
私「それはどうも、ありがとうございます。それで、リボルバーの話なんですが」
ポール「うん」
私「ポール、あなたの書いた曲は、とても泣けます」
ポール「ほんとかい?まあレノン・マッカートニーなんだけどね」
私「あ、まぁ。あなたがリード・ボーカルの曲ですね」
ポール「ありがとう、どんどん泣いてくれ。沢山ハンカチを用意しなくちゃ」
私「あなたの歌う曲には、アメリカン・ポップスに影響を受けた部分もあるように思います。ただ、やはりジャズを感じられる“グッド・デイ・サンシャイン”や、モータウン・サウンドを感じられる“ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ”など、黒人の音楽に思いを馳せることもできる気がします。聞くまでもないかもしれませんが、ブラック・ミュージックは好きですか?」
ポール「もちろん。当り前さ!」
私「それと、あなたの歌詞は女性への思いをストレートに書き綴ったものが多いですね。やっぱり女性は好きですか?」
ポール「笑。言わせないでくれ!君も同じだろう?」
私「えぇ、まあ笑」
私「ありがとうございました」
ポール「どうも、サンキュー!」
最後はジョンのところに。
私「ハイ!ジョン。初めましてです」
ジョン「やぁ」
私「本作を聴かせてもらいました。素晴らしいですね」
ジョン「うん」
私「あなたが歌う曲は、フォーク・ロックを感じさせる“アイム・オンリー・スリーピング”、サイケデリックな“シー・セッド・シー・セッド”、ぐるぐる回り続ける感覚が心地いい“トゥモロー・ネバー・ノウズ”とか。これらの楽曲は、まさにアメージングです!」
ジョン「うん」
私「いうなれば、音楽があなたを選んだかのようですね!」
ジョン「うん、うん。そうだね。でも、今の君は音楽の事をとんと分かってないようだね!音楽とはそういうものではないのだよ」
その後のジョンとの会話をほとんど覚えていない。何故なら、私は打ちのめされていたからだ。でも最後のやり取りだけは覚えている…それが、本当に大切なことだったことには、後から気が付いたのだが。
最後に4人が集まって来られた時に、最近の時事問題について聞いてみた。
私「あの、イギリスのEU離脱問題についてはどうお考えですか」
ジョン「僕は反対だ!人類は皆家族なんだよ。ほんとに今の国民はイマージネーションが足りないんじゃないかな?」
ポール「うーん。難しい問題だね。でも、ジョンがいつも言っているように愛こそすべてだから。まあそういうことだよ」
ジョージ「僕も一応反対だね。金に取りつかれた政治家は血祭りにあげるに越したことは無いよ。うん」
リンゴ「・・・・今は何とも言えないね。でも、人々が幸せでいることが一番大切だと思う」
私「わかりました。今日はお忙しいところ、お時間をいただき有難うございました。」
最後にポールだけ私に「じゃーね。また来なよ」と声をかけてくれた。
それから少し経って「リボルバー」を聴きながらジャケットをしげしげと見ていた時に、ジョンから受けた質問の意味がようやく理解できた。ジョンはこう言った「君はいま何回転目なんだい?」僕はどういうことですかと尋ねた。するとジョンは「人生は何回も回り続けるものだよ。でも、突然終わってしまうことだってある。それを肝に銘じて生きていかなきゃだめだよ」と言った。
ジャケットに記載された“LONG PLAY 33 1/3R.P.M”きっとジョンはこの回転数と年齢のことをかけていたのだろう。
回り続ける「リボルバー」の盤の内側で、針がカタカタと規則的な音を立てていた。
その時、声が聞こえてきた気がした。「今、何回転目?」私は「33回転目」と答えた。そして、「なにか分かった?」と声は聞いてきた。私は、こう答えるしかなかった。
「いえ、今はまだ何も。」