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SZA 『SOS』 ー 自分自身でいれば良かった季節の終わりを告げる『SOS』ー SZAがR&Bシンガーだったころがある。少なくとも『Ctrl』、『Z』では現代的という括りであっても、普通の R&Bシンガーでいられたときだった。しかし、今作で彼女は単なる R&Bシンガー…

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ROTH BART BARON『HOWL』 ーキングとプリンスが死んだ後の幸福論を探して僕らは旅立つー ロックは神と戦うプロセスのひとつだった。過去形である理由は、少なくとも今の日本のロックバンドで神と戦うアティテュードを持つ者は殆どいないからだ。だが、ROTH B…

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Seukol『Long Take - EP』 ーSeukolが2022年にギターソロを止めない理由とは?ー レディオ・フレンドリーでないブルース。このストリーミング時代において、Seukolには初っぱなからの長いイントロで出鼻を挫かれる。いやはや、でも少し聴いてみようよと、腰…

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笹川真生『うろんなひと』 ーうろんなひと笹川真生は世の中の失踪者が疾走し続ける意味を唄うー 宅録スタジオで作った正常なロックを奏でていた笹川真生。そのままでいれば、ボカロから出てきたギターロックの1人に数えられていただろう。しかし、その界隈に…

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テイラー・スウィフト『Midnights』 ーテイラー・スウィフトはジャンヌ・ダルクにならずして何になる?の段ー この作品によって明白になったのは『1989』が不本意に手に入れた栄光だった事と『folklore』が予め定められた栄光であった事だ。カントリーソング…

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帝国喫茶『帝国喫茶』 ー2022年の日本に生まれるべくして生まれた、終焉を察知してロックする青春の理を歌う奴らー 罪深きバンド名をつけた事を数年後、後悔するだろう。食指が動くにもかかわらず拒絶反応が出て、音を聴いて案の定。数分でストップボタンを…

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BUMP OF CHICKEN 『SOUVENIR』 ーみんなのバンプが生み出した「ダイヤモンド」の再定義は「ランプ」の再定義に向けた旅立ちの曲ー おそらく『aurora arc』の次に鳴るべき音だった曲だ。バンプがコクーンとしてのバンプを巣立つ意味合いがあったアルバムを経…

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踊ってばかりの国『paradise review』 ーパラダイス・レビューが解き明かすパラダイムシフトの真実ー 思い返してみると、踊ってばかりの国は、純真さをサイケデリックと共に与えてくれる怖さ、から始まっていた。その畏怖が彼らの音楽の気持ち良さでもあった…

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NOMELON NOLEMON『感覚派 - EP』 ーアイデンティティの化石化を美しいと言い続けられるポップの魔法とは?ー ボカロ界隈においてNOMELON NOLEMONが最もロックである。その理由は「SUGAR」でもわかるように、自らが提示しているメッセージがこの界隈でも苦味…

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RQNY『pain(ts)』 ー片手落ちの世界で歌う意味を問い続けるアーティストたちー 今のロック・アーティストの主題とはロックを歌う意味を考察する事にある。ロック自身が歌う意味を問う必要があるという、なんだか分からない世界だが…今まさに分からない世界の…

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YUSUKE CHIBA -SNAKE ON THE BEACH-『SINGS』 ー最適化の中心でチバユウスケが叫ぶ。そのスタイルから見えてくるのは、決して死なないためのラブソングを歌う事だったー チバが歌えばすべてチバになる事をチバニアンという。もちろん嘘だが、「BEER & CIGARE…

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カワノ『冷たい哺乳瓶』 ー正常と異常の狭間にあるカワノ時間の正体ー この作品はCRYAMYとカワノの間に存在している。バンドが異常を表現し、彼の中には正常な視点があるとした場合、その間の空間に位置するのがソロ時間なのだ。つまり、その狭間にある音楽…

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汐れいら『タイトロープ』 ー 一筋縄ではいかない承認欲求SSWとは誰? ー 汐れいらが目指すSSW像っなんだろうかと考えてみると…やっぱりグラマラスなSSWという例えしか思いつかない。佇まいはグラマラスから離れてはいるけど。『タイトロープ』の歌詞に桑田…

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ART-SCHOOL『Just Kids .ep』 ー柔らかい君の音とは木下理樹自身の声だった。それは新たなループの始まりになるだろかー 唯一欠落したものは何だろうか。今作に置いて、アートスクールの過去と現在とのリンク点を抽出すると「Just Kids」には初期のパンクさ…

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tacica 『singularity』 ー不確かなものを確かにするためにtacicaが選んだ10年後の景色とはー 悔恨からの懺悔、そして贖罪へ。『Jacaranda』から受け取った、その想念こそ、カタルシスの要因であった。00sの日本のギター・ロック、その1ピースとして、私にと…

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DIR EN GRAY『PHALARIS』 ー過去のDIRの住人が求める答えと世界がDIRに求める答えが遂に交わる時ー ーーー世界がDIR EN GRAYに追いついた…と先ずはパロってみよう。そんな常套句を使うまでも無く、本作が彼らの最高傑作である事については露程も疑いは無いの…

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BTS『proof』 ー白人でも無く黒人でも無い選択肢とは?僕たちは世界の果てまでQという選択肢に逃げ続けるー 相変わらず色眼鏡からは逃げられないなと思う。それはポップ・ミュージックの中でも同じである。「FAKE LOVE」は明らかに革命だった。トラップ・ミ…

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Ado『新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)』 ーAdoが素顔を明かすまでの時間ー Adoがいつ素顔を明かすのか楽しみにしているファンはいるのかな。しかしSNSという匿名世界の始まりからこの形態のアーティストが生まれるのは必然だったはず。でも、19歳の…

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坂本慎太郎『物語のように』 ーみんな違ってみんな笑うまで続く楽しい自粛生活ー 明るい作品というコピーにおよび腰になりつつ訪れたが、どうやら違ったようだ。むしろいつもの坂本慎太郎だろう。“フリー・ジャズ×チルアウト”な「それは違法でした」で歌われ…

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ゆうらん船 『 MY REVOLUTION』 ー消せない侘び寂びは涙の渦に帰するだろうー 『 MY REVOLUTION』の意味が彼らのテーマである古き良きロックからの新たな旅立ちである事は、ほぼ間違いないはず。ブリティッシュ・ロックやフォークをルーツとし、70sの日本の…

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山﨑彩音『 魂のハイウェイ』 ー世界がもし100人の村だったとき。そんな場合に必要な音楽とは?ー 山﨑彩音が自身の弾き語りの価値に意識的であれば、今作には到達しなかったかもしれない。つまり無意識にロックの偶像感を表出させた才能がその後のストーリ…

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米津玄師『 M八七』 ー米津玄師がすべての人に向けたレクイエムを歌う。それは何れ心のふるさとで鳴り響くだろうー ポップ・スター米津玄師誕生の分岐点は『STRAY SHEEP』だった。ポップとして消費される事の覚悟の果てに彼は新たな旅に出る事となったが、以…

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鉄風東京『 遥か鳥は大空を征く』 ー音楽に選ばれた未来予想図ー 東京で鳴るパンクなアンサーソングとなった。このオルタナティヴ・ロックには未成熟な声音とパンクなアティテュードが混じり合っている。国道や街、ビルという歌詞は新たな東京での始まりを告…

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CRYAMY 『#4』 ーCRYAMYは決して埋める事のできない絶望との距離を歌うー 《「君のために生きる」と言う君のためだけに出来る限り》“WASTAR”の歌詞が、『赤盤』で示した、目の前のあなたを救うために変わる、というカワノの姿勢の次の一歩である事は間違いな…

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imase with PUNPEE & Toby Fox 『Pale Rain』 ーもう、君は雨は見たか?とは聞かないし、本当はこわい三匹の子豚の話も無視しよう。imaseは今、この現実の上に立つための歌を歌うー マシンガンの音を効果音として始まるのはもうそこまで目新しくはないだろう…

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BUMP OF CHICKEN 『クロノスタシス』 ーみんなのバンプが『ユグドラシル』の「太陽」の再定義した結果「クロノスタシス」を生み出したー クロノスタシスという錯覚によって過去との扉が繋がる時この曲は始まる。近年のバンプのテーマである『ユグドラシル』…

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鈴木瑛美子 『5 senses』 ー第六感を至上命令とする音楽でありながらも、それを捨て五感だけで感じる事に至った、その未来とは?ー 歌唱力に定評がある女子高生から始まり、avexと契約。そして、実力派シンガーへと向かう道を進む鈴木瑛美子。その王道の結末…

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ザ・リーサルウェポンズ『アイキッドとサイボーグジョー』 ーアロマンティックに恋してるー そもそも最適化された世界でロックは必要かと問いかけられた場合。ザ・リーサルウェポンズみたいなのは必要だと私は答える。彼らこそ、最適化された世界のロックに…

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NOMELON NOLEMON 『POP』 ーボカロだけが創れる、世界で1つだけのポップとは何なのかー ボカロだけが作れるポップの正体をずっと探していた。音声合成技術は電脳にある膨大な音楽ライブラリから食指の赴くままにオトを選び音楽を作れる。その音楽的密林とも…

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當山みれい 『嵐の前の静けさに』 ー涙の数だけ強くなれるよ〜2021〜ー J-POPに最適化する事は當山みれいにとっては脱スーパーガールを意味する。商業的に成功するとか、彼女の意思だったとか、この際置いておこう。ただ音楽家としては正しい選択。結果的に…