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Playboi Carti 『Whole Lotta Red』 ―絶対に笑ってはいけない時は終わっても、誰も寝てはならない時はもうそこまで迫っている― ポップミュージックは図らずも予言になりえる。レディオヘッドの『キッドA』と『アムニージアック』は結果的に今のネット社会を…

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CRYAMY -red album-RELEASE TOUR[建国物語] 渋谷 CLUB QUATTRO 2021.11.14 リリースツアーのファイナルである本公演は、『赤盤』と同じく“ten”から始まった。金髪のロングを染め直し、サラサラヘアに仕上げてきたフジタ レイ。長くなった髪を後ろに束ね、…

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BUMP OF CHICKEN 『Small World』 ―Small Worldとは、藤原基央の根源にあるマイノリティがマジョリティを凌駕する瞬間であり、バンプにしか作り出せない死生観の在り方でもある― 2019年の『aurora arc』で4人がコクーンとしてのバンプを巣立ったことは、ひと…

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CRYAMY -red album-RELEASE TOUR[建国物語] 大阪 Live House Anima 2021.11.6 リリースツアーのセミファイナルである本公演。スリーピースガールズバンドTETORAとの対バンによって、カワノは新たな気づきを得る事になったとMCで語った。それは、ライブMCで…

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Drake 『Certified Lover Boy』 —愛を渇望していたドレイクは如何にして愛を与える男になったか— カナダ出身のドレイクはアメリカにおいてはアウトサイダーだったのかもしれない。ラッパーとして戦ってきた彼にはシリアスな姿が垣間見えるが、実はアメリカで…

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mihoro* 『愛して欲しいの』 ― 愛を乞う人がいる限りロックは死なない― mihoro* に漂う敗北感の正体を追っていくと、それが常にロックにある敗北感と同質のものであると気がつく。完全に何かに負けた訳ではないのに感じられる憂いによって、彼女とロックが出…

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Kanye West 『Donda』 -カニエ・ウェストはDondaによって復活を歌う。そこに隠されたメッセージによって世界はもう一度生まれ変われるのか- カニエのキャリアはラッパーとして始まったが、母の死で一度終わる。その当時、リズムマシンのローランド・TR-808…

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betcover!! 『時間』 -新たなゼロ地点の狂気へようこそ- ずっと騙されていたことに私はようやく気づかされる。ヤナセジロウという若者によって。よりにもよって、古典的な狐につままれていたとは。希望も絶望もすべては、何かを基準にした相対的な事柄によ…

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pinoko 『Melancholy − EP』 ―人の絶望を笑うな パート2― 癌のように侵食していく悲しみをポップに昇華してpinokoは歌い、ライムする。君は“赤い糸”の正体を見たか。 EPの4曲は、トラップ・ミュージックな“赤い糸”、オルタナR&Bな“I'm sorry”、ネオソウルな”…

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Official髭男dism 『アポトーシス』 ―ain't afraid to die- これは髭男が死について言及した曲。といってしまうと、常に死を題材にしてきたロックと関連付けてしまうが、そうではない。『HELLO EP』は確かにロックによる髭男の新たな転換点だった。しかしこ…

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chilldspot 『未定』 ー凋落の国の幸福なバンドたちー ロックバンドが絶望を歌えなくなった時からその国の凋落は始まる、と言ってみる。それは冗談にしても、もう4人が気怠そうな雰囲気で演奏すれば機能出来ていた時代は終わった。だから、四つ打ち、ネオソ…

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AAAMYYY 『AFTER LIFE』 ―ポストパンクガールはJ-POPガールにあらず― エイミーが何故J-POPガールにならなかったのか、ずっと疑問を持っていた。その理由が今回わかった気がする。この曲にあるダブステップから感じるのはいつもの電子音楽ではなく、生々…

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當山みれい 『またねがあれば』 ―P.S.もう恋なんてしない、なんて― スーパーガール當山みれいはデビュー当時ダンスも出来る実力派R&Bシンガーというスタンスだった。時代のモードからEDMなどを取り入れた楽曲で、まさに同世代が共鳴できるアンセムを発信。…

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長澤知之 『LIVING PRAISE』 ―世界の中心で人生賛歌を叫ぶ― 長澤知之は元々恋愛の伝道師である。恋愛対象は音楽であったり、異性であったり。それについて彼は、時に大々的に歌い上げ、時に事実を淡々と伝えてくれる。 アコースティックギターを片手に、フォ…

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タイラー・ザ・クリエイター 『コール・ミー・イフ・ユー・ゲット・ロスト』 ―元迷子は、ルパンになり、なぜ今は迷子の相談員をしているのか― 《私たちはどこにでも行ったが、唯一旅していないのは時間だけだ》というようなことを最後の曲“サファリ”でタイラ…

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CRYAMY -red album-RELEASE TOUR[建国物語] 名古屋CLUB UPSET 2021.07.04 アンコールでの"世界"。6分49秒の真ん中でカワノは時間が足りなくなったから喋るわって、間奏中に語り始めた。しっかり聞きたいからちゃんとMCとして話してくれと思ったが、時間が…

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GRAPEVINE tour 2021 愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール 2021.07.03 グレイプバインがまたやってくれた。『新しい果実』のツアーであるからといって曲順通りに演奏しないのは周知の事実で、これまでの豊潤な曲を織り交ぜながらも、毎度の事である…

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CRYAMY -red album-RELEASE TOUR[建国物語] 2021.6.20 in 京都 磔磔 つくづくいいメンバーが集まったな。それが彼らを観た第一印象だった。寡黙な雰囲気のタカハシコウキは、過剰な煽りはせず、黙々とベースで綿々とビートを刻む。ピンク混じりのロングヘ…

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ラナ・デル・レイ 『ケムトレイルズ・オーヴァー・ザ・カントリー・クラブ』 ―悲しく無いラナはただのラナだ- ラナ・デル・レイは古典との近接点に意識的な音楽家である。逆にテイラー・スウィフトには無意識なる強みがあった。ラナが歌手として到達した場…

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GRAPEVINE 『新しい果実』 -グレイプバインってほんっとうに素晴らしいものですね- 今作はバインの死を題材にした映画の様なコンセプトアルバムである。それがわかる歌詞をピックアップしてみよう。《ここでそれを嗤っている者/どれもこれももういい》“Gif…

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BUMP OF CHICKEN 『なないろ』 -夜が明ければ君は消える。でも、YOASOBIの季節にまた逢える- 不在は人を不安にさせる。でも彼らは変わらず音楽を届け、私はそれに向き合う。これまでも、これからも。 藤原基央のサイドギターのカッティング、増川弘明のリ…

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GRAPEVINE 『目覚ましはいつも鳴りやまない』 -そして世界から誰もいなくなった?- 「ねずみ浄土」と「Gifted」に挟まれた曲が先行公開された。本曲は、R&B色の強い古典的な残香から、本来の彼ららしいロックへの飛翔、その2つを接続する役割をもつ。電子…

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GRAPEVINE 『ねずみ浄土』 ―グレイプバインはどこへ消えた?― まさに田中和将の独唱状態である。本曲では彼の思想が暴走している。しかし、それを良しとしているバンド。相変わらず繋がりが強固な方達だ。 今回はコーラス、ヴァースを繰り返すトラッドな形式…

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くるり 『天才の愛』 ―2021年、ふりかえればヤツがいない― くるりの13枚目のアルバムは振り返らずとも愛の作品だと分かっていた。先行配信曲、本作の題名からも明らかだろう。 では今回、愛というワードに込めたものは何だったのか。それは、2020年に存在し…

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daisansei 『ぬかるみ山』 -日本昔話「ぬかるみ山」でdaisanseiは全ての養分をその土に宿す- daisanseiにとって「ぬかるみ山」は大正解である。daisanseiを表すキーワードを挙げるなら、ネオアコ、ロックンロール・リバイバルなど。おそらくアーバンな香り…

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アーロ・パークス 『コラプスド・イン・サンビームズ』 -君の瞳は100万ボルト、じゃあ~りませんか?- アーロ・パークスは「BLACK DOG」でこう歌う《私は君の唇から悲しみを舐め取る》と。彼女は自身の歌で誰かが救われる事に意識的なのだ。 東ロンドン出…

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足立佳奈 『ノーメイク』 ―マイクをステージに置く前に― 本曲にはアーティスト足立佳奈vsリアル足立佳奈という視点が存在する。『まちぼうけ』と同様に恋愛ソングで、作曲はCarlos K.との共作。90年代後期以降のソウル感をもった楽曲に仕上がった。 歌詞の中…

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Port Town FM 『Jumble』 ―バナナフィッシュにうってつけの日はまだ来ない― Port Town FMは夏が似合う令和のミクスチャー・ロックバンドだ。 2000年代前半のロックンロール・リバイバルによって、古典的なロックとの近接点が生まれ、それが2010年代の日本の…

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くるり 『I Love You』 -ラブソングはくるりんぱと- 日本で、日本人にしか歌えない世界水準のポップソング=ラブソングを歌うのがくるりだ。 本曲は「2034」や「Liberty&Gravity」の傾向を引き継ぎながら、『songline』でのくるり節復活を経て、未発表音源…

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GRAPEVINE 『Gifted』 ―悪乗りジョニーは死んだ― 是迄の世界は例の件で唐突に幕を閉じた。可能性の光は幾つも消え、SNSは偽りの絆を示したまま明滅している。世界を嘲笑した悪乗りジョニー、バインはここにいたはずなのだが。 冷や水をかけるような田中和将…