LIVE REPORT

OBLIVION DUST

"Us Against Them Tour" 2018-19"

in 名古屋 Electric Lady Land 

2018年12月23日

   1曲目は最新作から“Death Surf”という順当な始まりだった。ツアー・タイトルから、今回のライブがファンのために行うツアーであることを窺わせる。KEN LLOYDSNSの発言から察するに、ファンとオブリが対峙する的なツアーのようで、この名古屋での彼等のファッションもいつもよりラフ、会場との一体感を重視する姿勢が見られた。

    オブリは作品毎の色合いや、音楽的な変化が大きいバンドだ。だからライブの中で各アルバムの曲が数曲続き、異なる情景を見せてくれる。もちろん今回もそうだった。

   ミクスチャー・ロック“NO REGRETS”の演奏が始まり、4thアルバム『BUTTERFLY HEAD』のモードがライブの世界をまた変えていった。RIKIJIがそこでベースを弾きながら、ダックウォーク的な動きでステージを左右にゆっくりと移動する、中々のフットワークでノリノリ具合。

    今回改めてサポートを含めたメンバーをしっかりみて感じた事は、オブリの特徴であるハード・ロック寄りのパンクやメロコアのリズムを、ARIMATSUの安定感のあるドラムが支えていること。K.A.Zのギター・テクニックは"When you say…"などのメロディを演奏するときのエモーショナルさにも影響を与えていること。yujiのリズム・ギターとK.A.Zとのユニゾンも今のオブリにとって重要なポイントになっている。そして、フロントマンKEN LLOYDの煽りと動き回るアグレッシブさはロック・アーティストとしての正しさを体現しているだろう。

    KENがMCで、ここのスタッフが用意してくれた水がデカイというのを引き合いに出して、名古屋のみんなは暴れてくれるってことだよね?というくだりから、みんなで歌ってくれと、"DESIGNER FETUS"のシンガロングが会場を盛り上げた。

    このツアーでは新曲も披露されている。"ダンス"というキーワードで紹介された曲はいわゆるダンス・ナンバー。これが今のオブリのモードなのだろうか。前半はお馴染みのダンス・ビートから始まり後半は縦ノリから横ノリに変化する。というか2018年のヒップホップの主流のトラップ的な感じもあり、身体に与えてくるのはハウス・ミュージックにある密室感でもあった。

   ダンス・ミュージックの流れで"Haze"、そして"Never Ending" 5thの『OBLIVION DUST』サイドが展開されクライマックスへ。最後のMCでKENは、バンドがまだ売れてないときから名古屋のライブハウスが一番盛り上がっていた昔話をして、この地への思いを伝えた。

   ヒットするモノは時代の半歩先を行っていると言われる。オブリはほとんど、時代の一歩先を行っていた。だから、どこにも属さないし、時代に乗ることもなかった。それが彼らの立ち位置だった。

    ラストは最新作『DIRT』サイド 。ハイライトはやはりオブリのメロコア、パンク"Under My Skin"だった。現在主流のロックを使い表現する。バンドとしての正しいアプローチであり、彼らの現在地を示してくれた。

   解散と活動休止をした結果、オブリは現在のロックと並走することになった。つまり時代が求めているロックをオブリが奏でることにつながった。それはもちろん健全なことである。ただ私がオブリに惹かれた理由は、なんだ、この音って思った瞬間があったからだ。今回の新曲で、久々にその一端を少し感じられた気がする。やっぱりオブリはアバンギャルドじゃなくちゃいかん!とかおじさん的な思いを抱きつつ会場を後にした。