DISC REVIEW

GRAPEVINE

『ALL THE LIGHT』

 

―すべてがオールライトになる―

 

三つ子の魂百までというが、私の場合、何がしたいか分からん行動をする子だったという。掃除機を壊した事もあるのだと。

『ALL THE LIGHT』を聴いた。何故か森博嗣の『すべてはFになる』が頭を過ぎり、本作を解く鍵がそこにある気がして読んだ。予想通りだった。バインは全てをオールライトにするつもりなのかもしれない。

森の作品で7だけが孤独という部分がある。10進法では7だけが、素数で倍数が無い数字だという。

マントラという占いで7は光を表す。田中和将は光という言葉を歌詞に使ってきた。“7”がバインの音楽とリンクした。

田中のパーソナルな視点が具現化され始めた曲は「少年」だ。歌詞に《照らしてほしいのは/そんな遠くばかりじゃなく/目の前の本当の世界だけ》とある。本作では「Era」がそれを更新する。《あの頃のぼくらが/知らなかった真実を/知ってどうすんの》と、あの歌詞をオールライトに変えていく。本作を一通り聴けば過去の曲を軽やかに“Alright”と言っている様な部分に出会う。

世の中には物事をそのまま捉える人と穿った見かたをする人がいる。私は後者だと思う。田中はどっちだろう。普通、光とは希望の象徴だ。しかしそれは闇があってこそで、そこから抜け出したから、光=希望になる。闇を孤独の象徴とし、光を希望の象徴とするのが一般的だが、逆説的に言えば闇の中の孤独を抱えた者は、光の中に安易に飛び込むことが出来ず、だからこそ光は忌み嫌うべき存在になることもある。今まで田中にとって光とはそういう存在だったんじゃないか。やっと光に向き合えた。それがすべてをオールライトにすることだった。

因みに“F”も田中和将にリンクした。Fとは16進法で15を意味する。そう、田中和将の誕生日。本作は田中和将へ辿り着くための大きな一歩といえる。

私「田中よ1977年に何があったか教えてくれないか?」

田中「お前に聞く覚悟があるのかねぇ?」