DISC REVIEW

KOHH

『UNTITLED』

 

―令和の国の名前の無い若者たち―

 

Hi!僕はね(何?)・・・僕の名前は(誰?)・・・「マイ・ネーム・イズ/エミネム

最近、ぼくりりが引退した。彼がメディア等で語っていたように、周りが作り上げた「ぼくのりりっくのぼうよみ」という存在に彼自身が憑りつかれていったらしい。私は思っていた。このままいったら、現代の尾崎豊になってたんじゃないかと。最近尾崎のドキュメンタリーをTVで観た。彼も、周りが作りあげた「尾崎豊」像に支配されていったらしいから、そこまでいったら、ヤバかったかもしれないと。尾崎豊も名声と共に、死も掴んでしまったから。ぼくりりは無意識にそれを避けたのか。現時点では名声より今の幸せを選択したといえるだろう。

2011年の作品、古市憲寿著『絶望の国の幸福な若者たち』にそういった今の若者像の分析が詳しく書かれている。

私自身が一番気に入った箇所は、第2章ムラムラする若者たち/「幸せ」な若者の正体にある“人は将来に希望を無くした時、「幸せ」になることができる”という箇所だ。

私もこの説は正しいと思う、何故なら光の周りには闇があり、幸せは足枷だという。つまりすべての正しさの裏には間違いがあり、白の裏は黒だ。だから幸せだと感じられない地点があって初めて幸せだと感じられる場所が存在する訳だ。

それと同時にこれは私の持論だが、現在の若者が感じている幸せというのが市場操作された幸せではないかという危惧も持っている。杞憂ならいいが。

何はともあれ、ヒップヒップMCのKOHHは『UNTITLED』の「いつでも」でこうライムする。《いつでも気楽/いつでも気楽/あっちでは泣く/俺らは笑う》私たちの幸せの裏では誰かが泣いている。そんな世界だ。でもなんで“UNTITLED”というタイトルになったのだ?

KOHHは大体“俺ら”と歌う。今の若者は実名で幸せを叫ばない。何故だろう。おそらくそれが日本の中心で愛を叫ぶ唯一の方法なのかも。

最後に名前を教えてよ。

りんなだよ。