DISC REVIEW

清春

『JAPANESE MENU』

清春孤独のグルメ

 

ダウンタウンなう清春が出演した時、“伝説のロッカー”と紹介されていて、もうそんな存在になったのかと時間の刻印を感じていた。


今作は、2016年の『SOLOIST』の続編だと私は捉えている。それ以降の『エレジー』『夜、カルメンの詩集』の2作はひとつのコンセプトに基づいたイレギュラーなものだった。いずれもソロの作品であることに変わりはないが、2015年以降は黒夢の活動は行われていないこと。また、sadsも2018年の『FALLING』が最後の作品とされている。つまり、清春にとってのバンドという母体が完全に無くなった後、本当にSOLOISTになった清春の作品が本作と言えるだろう。結果的に黒夢的要素、sads的要素が縦横無尽に散りばめられた作品風景となっている。


当然そんなことは今までも出来ていたことなんだが、何がしかの縛りがなくなったように感じる。清春がつぶやいていた、今作は楽曲にベースを使っていないということ。黒夢以降、彼の曲にはベースは欠かせない音だったはず、その音を敢えて引き算してみた。それが功を奏したか、黒夢sads、そして清春の垣根が喪失し、今作が生まれたのではないか。


すべてが繋がった後、清春の歌詞世界の新たなリンクに気付くことになった。「ロマンティック」の歌詞に再び“sister”が登場する。最後に《振り返る時想う、/朝を待ってきっと僕らだけが此処で会えたよね》と歌う。それが黒夢の「MARIA」の《もしかしたら 逢える はずもない MY 『SISTER』》という歌詞と見事に繋がる。夢の中(黒夢)でしか会えないと思っていたシスターに夢から覚めて本当のシスターに会えた。そんな瞬間であろう。


今作はベースレスという点も相まって、今まで以上に清春の声にフォーカスが当たってしまったと思う、だからこそ、より清春のアーティストとしての孤独が浮き彫りになっている。清春孤独のグルメ的な作品を賞味した結果、正しい孤独のススメを教えてもらったように感じる。