DISC REVIEW

KOHH

『worst』

―消えた玄人と増え続ける素人Ⅱ―

 

最近ラップ・ミュージックをしている人たちの中で引退という言葉が流行っているようで。つもりこれは、政治家が辞職しないと言って、その後必ず辞めることや、プロレスラ―が引退と言ってなんども復活するようなことだろうか。


KOHHが引退を表明してからの本作は、つまりは正にそういった作品なんだが、今までも彼はスターの自分と本当の自分の対比を歌詞にしてきた。そんな彼が遂に普通の女の子に戻りたいと言い出した。彼が引退した理由は簡単に考えれば理解できるのだが、難しく考えると分からなくなる。一つ考えられることは、KOHHの半分は韓国人の血が流れていることが一つの要因になっているのかもれない。私自身韓国人のことはよくわからないし生半可な知識では言えないことだけど、よく韓国の有名人はネットでのバッシングが元で自殺してしまう人が多いこと。日本人の一般ピープルには少し理解出来ないところもある。少し調べると、韓国人は過去の戦渦を教訓に、人と向き合う事や戦う事に長けているらしい。そのようなDNAがKOHHを戦士のような玄人ラッパーへと作り上げたのかもしれない。


彼が最後のアルバムの表題曲といえる「しあわせ(worst)」で、しあわせ過ぎる状況を歌ったのは、《俺たちは最低/言いたいけどちゃんと/持ってく墓まで/地獄へ行ったあと/神様に懺悔》という歌詞。彼が遂に戦いを止める。そもそも本当に戦いだったのかはKOHHにしか分からないが。今作で歌われたのは結局、自分と女と友達の事だけだった。こんなシンプルなワードだけでラップを回せる人を玄人と言わずして何と言おう。


最後の「手紙」は大ママに向けた手紙をただ読むというシンプルなもの。ここには韓国人の血のつながりを重要視する民族性と日本人の恥の文化との二面性が如実に現れている。ピカチュウレッドブル、グミなどのワードを容易に使えない素人ラッパーはもういらないだろう。