DISC REVIEW

玉名ラーメン

『Sour Cream‐EP』

 ―ラブとマネー―

 

2001年生まれの女性ラッパー、その名は玉名ラーメン。なんじゃその名前はと思って、玉名だから熊本出身かと思ったら、東京生まれらしい。本作での彼女のラップはどうも2020年を端的に表現しているようだ。

明確なメッセージでアジテートするわけではなく、過激なアプローチをするわけでもなく、エモーショナルな吐露もせずに、淡々とささやくように紡がれる言葉の連鎖。

いきなりダークな打ち込みトラックから始まる「Angels Garden」《今までとマジで何かが違う》と、ラーパーらしいワードが飛び出す。そして《ファンデー・オブ・ラブ》という印象的な歌詞がリスニングできた。フェアリーなタイトルのくせして、どうやら愛とお金を比較しているシリアスな楽曲。

淡い恋のようなトラックが流れる「Awai」だが《ありえない》という囁きから始まることからも、ポップ・ミュージックの正しい方程式通りイイ意味でタイトルを裏切る楽曲。

「Mei Mei」はハウス・ミュージックで可愛らしいタイトルも付いているが、冥冥と変換すれば暗くて目に見えないというコンテンポラリーな現状を示唆している。

「Planet」と今作のアルバム・ジャケットを合わせてみると彼女が地球外生命体に見えてこなくもない、つまりはデヴィッド・ボウイ的なアプローチとも言える。

「Rsca」の意味をググってみたのだが、おそらくは車のエアーバックを表していると思われる。ダブステップに絡む《シューティング・スター》《君をとめて/君を探している》《解き放たれるときがくることを》等のワードから想像すると、全方位にエアーバックが装備されていて君を受け止める、と捉えることができる。

2020年という曖昧模糊な空気感と彼女のラップとの親和性は非常に高い。そして、愛や君というポップ・ミュージックに欠かせないキーワードも忘れていないアーティストでもある。

タイトルのサワークリームのように、甘いようなすっぱいような世界にうってつけの作品である。