DISC REVIEW

lyrical school

『Time Machine』

―フィメールラッパーは笑わない―

ハルカリも上松秀実もクールだった。そして同じようにlyrical schoolもクールになった。本曲のクールなトラックとリリックを歌う彼女達は2020年代的だ。

リリスクが始まった2010sは時代的にシリアスなものが求められていた。ブラックミュージックの再考、つまりは根源的な音楽への回帰だったが、そのモードがリリスクにそぐわなかった。

だが、2020sはポップ音楽が再度エンタメ的機能を求められる周期になる。その要因の一つがコロナだった。それに対する起爆剤として人々が音楽のエンタメ性を求める予感がする。まるで予言するかのように、シリアスな表現者であるKOHHやぼくりりが日本のヒップホップ前線から去った。

リリスクがクールになったもう一つの要因は、フェミニズムへの方向転換。つまりは、ターゲットを同世代の女性にも広げる事。ユニット名の主題だった、ラップ挑戦者を増やすねらいにもリンクし、総合的にこのクールなリリスクが2021年のムードと合致していくはずだ。