DISC REVIEW

Port Town FM

『Jumble』

 

―バナナフィッシュにうってつけの日はまだ来ない―

 

Port Town FMは夏が似合う令和のミクスチャー・ロックバンドだ。

2000年代前半のロックンロール・リバイバルによって、古典的なロックとの近接点が生まれ、それが2010年代の日本の音楽シーンに影響を与えた。オルタナティブ・ロックを入り口に、その2010年代に培われた土壌から、ギターカッティング、16ビートが日本人にも馴染みやすい音楽的要素として機能している。そこにラップ、シティーポップ的な心地よいメロディーが混ざり合った、作品タイトル通り”Jumble”な音楽だ。

夏とロックはよく合うというのは一般論で、夏を嫌うロック少年少女もいるし、私も後者の肩を持つ。昔から夏の終わりを感じる作品に親近感が湧く。無責任な私は破滅主義者でいられるはずだった、2020年までは。破滅しない前提の元で、破滅主義者を演じられることに気が付いていたはずだ。その全てが今、否定された。

ロックは生と死、青春や刹那的な事柄を歌詞に込める。《背景は海で/ファイトクラブでヒマワリ咲いちゃうくらい》《聞いてほしいよ/あの葬式のこと》「Freaky DRV」、《ニルヴァーナ聴き直し/「ライ麦畑」読み直し/変わり行く日々を/ただ眺めてた》「辛勝」。正しいロック理論継承がこういう所にある。

ロックバンドが終末を歌える限り、私たちにまだ終わりは来ないはずだ。