DISC REVIEW

GRAPEVINE

『新しい果実』

 

グレイプバインってほんっとうに素晴らしいものですね-

 

今作はバインの死を題材にした映画の様なコンセプトアルバムである。それがわかる歌詞をピックアップしてみよう。《ここでそれを嗤っている者/どれもこれももういい》“Gifted”。嗤っているのは、冷めた目で世の中を批評してきた彼らであり、それをもういいと切り捨て、これまでの思想を否定する。《バナナはフルーツ/それともスイーツ/わたしも喰らう/好き嫌いはよせ》“ねずみ浄土”。ここでバナナを引き合いに出し、彼らを表す果実、グレイプがもう存在しない事を示す。

そして、全編公開でついに明らかになったその後のシーンとは、バインへの追悼の風景であった。彼らがいた頃の幸福な場面の回想がコマ送りの様に流れ、涙腺を刺激していく。そこでは私たちが求めるメロディがヒットパレードの様に的確に鳴り続けていた。その体験はまるで彼らのロックの歴史を遡るが如く。

仮面ライダーの悪役が最終回に、人間が自然破壊をやめない限り俺たちはまた生まれてくると言い残して死んだ。バインを悪役とすると語弊があるけど、嫌いじゃないと田中和将は言いそう。世界が変わらない限り、彼らはまた戻ってくる。

“最期にして至上の時”のラストの歌詞《祈りの向こう/めぐり逢えると》で、一筋の光が見えた。PLAYからPRAYへ。かくして円環は閉じる。