Official髭男dism
『アポトーシス』
―ain't afraid to die-
これは髭男が死について言及した曲。といってしまうと、常に死を題材にしてきたロックと関連付けてしまうが、そうではない。『HELLO EP』は確かにロックによる髭男の新たな転換点だった。しかしこれはそれを経た上でもう一度ポップとしての十字架を背負った上で、ポップとして死に向き合ったものだ。
曲名が示すものとは進化の過程で起こる細胞の死の事。死が身近になってしまった今、ポップとして歌う必然性が出来てしまったことを理解して頂けると思う。楽曲としても、ヴァースとコーラスを繰り返す構造で、その中でも、電子音からドラムにビートが変化したり、コーラスでは徐々に高音ボイスに変化したりと、正に細胞の進化を表すかのように進む。
コロナによる細胞の死を変えられるのは医療しかない。もちろんポップがアポトーシスになることは出来ない。音楽家として髭男が出来ることはファンタジーを見せてくれることだ。
2回目のコーラスの歌詞を見て欲しい。
《水を飲み干しシンクに グラスが横たわる》
《解説もないまま 次のページをめくる世界に戸惑いながら》
ここにある、現実と虚像の融合たるファンタジスタこそ、圧倒的な普遍と戦うための髭男的ポップネスの極致だろう。