『クロノスタシス』
ーみんなのバンプが『ユグドラシル』の「太陽」の再定義した結果「クロノスタシス」を生み出したー
クロノスタシスという錯覚によって過去との扉が繋がる時この曲は始まる。近年のバンプのテーマである『ユグドラシル』の具現化というの側面から捉えると「太陽」の再定義をこの曲は担っている。つまり、過去の弱い自分とそれを脱する決意をした後の自分を描いたパラレルワールドの物語をもう一度、現在の時間軸で再現したものだと言える。
EDMをベースにした楽曲になっているのは、秒針のリズムとの親和性からだろう。「ray」や「Butterfly」の様に光を捉えるための機能性では無く「メーデー」での光と影の邂逅を実現するためのパルス的な意味合いが強いと言える。
思い返せば「ダイヤモンド」からバンプとは、常に落し物を拾ってきた歴史を歩んできている。では今回は何を拾ったのか。
《それっぽい台詞で誤魔化した/必要に応じて笑ったりした/拾わなかった瞬間ばかり どうしてこんなに/今更いちいち眩しい》
そう、「太陽」においての、扉を開けずにいた側にフォーカスし、その存在自体を拾う意味がここに含まれている。
いずれにせよ、ここでは錯覚は錯覚で終わる。それは藤原基央自身は扉を開ける側を選んだ者であるから、その反対を体験する事はもう出来ないからだ。では、この曲が何故生まれたかというと、もちろんバンプがもう4人だけのものでは無いからである。みんなのバンプが生まれた後の、みんなにとっての「メーデー」的発想を示唆する曲が「クロノスタシス」と言えよう。
だからこそ、「メーデー」で藤原基央が自身を救う意味を持たせた様に、本曲には《僕は僕を どう救える》という、あなたなら自分をどう救う?という藤原基央からのクエッションが含まれているのだ。
ただ、バンプの信念が最後の歌詞に漂っているのも、錯覚では無いだろう。
《鮮明に繰り返す 君の声が/運んできた答えを まだ》という光の側と《しまっていた言葉を 今 探している》という影の側が平行移動しつつ、お互いの正しさを支えるが如く。