DISC REVIEW

imase with PUNPEE & Toby Fox

 

『Pale Rain』

 

ーもう、君は雨は見たか?とは聞かないし、本当はこわい三匹の子豚の話も無視しよう。imaseは今、この現実の上に立つための歌を歌うー

 

マシンガンの音を効果音として始まるのはもうそこまで目新しくはないだろう。しかし、少し別の音を想像してみるとPCのタイプ音と聞き間違えても良さそうだ。そうすると、自ずとSNSを連想させ、2022年に私たちと戦争をつなげた張本人を恨めしく思い返すのだ。

3人タッグでの音作りも世界の音楽制作の在り方から見れば正解なプロダクションだろう。お互いの今作での役割を違った角度で考えてみるとimase の歌は現在地、PUNPEE 作リリックが過去のレガシー、Toby Fox のピアノのメロが空想、という役割を果たし、ポップミュージックを生み出すための関係が正しく機能していると言える。

戦争と音楽をリンクさせるために安易にCCR「Have You Ever Seen The Rain」を引き合いに出すのはよそう、と言ってまた、パブロフの犬のように繰り返す。音楽業界やTV業界の演者任せの末路と同じく、間違った関係性はいずれ世界を崩壊させるだろう。今世界で起こっている事は、三匹目の豚の家を作れるのに藁の家を作ろうとしている事に等しい。そして、それを止める事も出来ないと悟るのは、私自身もそれに加担する共犯関係に依存しているとわかっているから。

imaseの楽曲に「逃避行」があるが「Pale Rain」が指し示してくれたのは、どこにも逃げ場所が無いって事。PUNPEE 作リリックが描くいかがわしく余裕ある世界はもう過去で、Toby Fox の空想のメロに飛び込む事も困難だ。つまり消去法で、imaseの歌う現実こそが残された希望というしかない。見るまえに跳べ、では無くだ。先ずは淡い雨を見よ全てはそこからなのだ。そこにある圧倒的な現状認識の必要性を知ったとき《まぁなんとかなるっしょ》がロックとして確実に鳴り響く。