DISC REVIEW

鉄風東京
『 遥か鳥は大空を征く』


ー音楽に選ばれた未来予想図ー


東京で鳴るパンクなアンサーソングとなった。このオルタナティヴ・ロックには未成熟な声音とパンクなアティテュードが混じり合っている。国道や街、ビルという歌詞は新たな東京での始まりを告げる意味も持つのだろう。

仙台からの4人組ロックバンドの1st SGで大黒崚吾(Vo,g)は《誰だって1人になれる世界で僕は》という歌詞で2020以降の新たな普通という感覚を呼び起こさせる。仙台で彼が1人だったかは知らないが2019年より1人の時間は多かっただろう。さらに東京でより1人がクローズアップされるというロジックは成り立つ。

鉄風”からナンバーガールをイメージさせる意味はあるのかなと考えるとやはり地方出身が感じる東京の皮膚感覚だろうか。《焼きついては消えない音楽よ》の焼き付くと鉄風の関連性を感じつつ。そこからの連想で、バンド名を端的に表した初手曲になっているんだろうなと思う。

結果的に本曲は音楽に選ばれた未来の自分からのアンサーソングを今歌うという視点と、1人だった自分は音楽を選び音楽にも選ばれたという二つの意味が含まれる。そして、この俺を選んだ音楽よ!という思いを陽性に響かせ、それをこの瑞々しいバンドサウンドと混ざり合わせている。今の彼らだからこそ出来るロックだ。