DISC REVIEW

Ado『新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)』


ーAdoが素顔を明かすまでの時間ー


Adoがいつ素顔を明かすのか楽しみにしているファンはいるのかな。しかしSNSという匿名世界の始まりからこの形態のアーティストが生まれるのは必然だったはず。でも、19歳の彼女がAdoを被った上に「ONE PIECE」のウタというキャラを被って歌うってなんか、マトリョーシカみたいにややこしくなってきた。

そんなイメージに沿う様に、ウタの歌とピアノの旋律で緩やかに始まるイントロから突然、海賊のおどろおどろしい太鼓の如きドラムビートと、ポストパンクを思わす冷厳なシンセ音が鳴り響き、曲は始まる。それとは対極にあるように歌詞のメッセージはタイトル通り、陽性な情熱が溢れている。

Adoが素顔を見せない事がお笑いに取り上げられるくらいに社会現象化した。その理由はコロンブスの卵だったから。誰もが簡単に出来たはず、でも誰もやらなかった。なぜならみんな始めての事は怖いからだ。そして彼女がAdoになりたいと出てきたら、どうぞ、どうぞ、というダチョウ倶楽部のネタみたいになった。だから、彼女の素顔を見たいというのは転校生の初泣き顔を見たいのと同義語なんだよ。

Adoが素顔を明かすメリットは今は無いだろう。開けても開けても真実が分からない国もあるしね。しかし、ある役者は歌舞伎を被って演じてる時が一番真心で伝えられる、武士の甲冑に近いみたいな事を発言していた。やっぱりそうなのだよ。彼女にもAdoだから言える真実があり、さらにウタを被ったら、それを上回る真実を伝えられたりして。この曲の無敵感が多分そう。でもさ、中田ヤスタカは何故、こういう陰性なシンセ音にしたんだろうね。それの方が新時代っぽいという計らい?でも、私なんかは全然信じてなくて、最後の歌詞がどうしても、信じないんだって聞こえちゃう。