DISC REVIEW

踊ってばかりの国
『paradise review』


ーパラダイス・レビューが解き明かすパラダイムシフトの真実ー


思い返してみると、踊ってばかりの国は、純真さをサイケデリックと共に与えてくれる怖さ、から始まっていた。その畏怖が彼らの音楽の気持ち良さでもあった。あの空気感のまま突き進んでいたらどうなっていただろうと、また怖くなる。終着点は見ずして回避したわけだ。その処世術として、すべてにおいてよりオーガニックに表現するという道を下津光史は選択したのだと思う。

サイケデリックからオーガニックに移行する事は音楽的にはより削ぎ落としたものになる。つまりレゲエや根源的な音への追求などを経て、歌詞世界としては、直接的では無くファンタジーからリアルを表出するものへ変化し、行き着いた先が『moana』。完全に自然なる音世界は紛ごうことなき正義であった。しかし、それは同時に悪に肉薄した地点でもある事は言わずもがな。結果的にそれはバンドをサイケデリック・ロックへ自ずと呼び戻す契機を作る事になった。

世界でパラダイムシフトが広がりつつある。脱サラ都会離れ手作小屋暮らしYouTuberもそれ?どうなんだろう。昔のヒッピーも既存の世界に反発して、より正義を目指した。麻薬とセックスに侵食された末路だったが。件のYouTuberも今のところは正義が確立していたとして、個が集団化すれば新たなルールが生まれてしまい…元の木阿弥に?私達はまた、始めの一歩を見たいだけなの。振り出しに戻る事は想定せずに。

パラダイムシフトはウロボロスで無くてはならないだろう。パラダイス・レビューが見出したものとは、やはり世界は変わらないということでもある。踊ってばかりの国も再びサイケなロックを武器に、もう一度スタート地点に立つ。ただ、正義の果てへの旅で出会った悪魔に、ニヒルに世界を見るユーモラスさという悪魔の実を貰ったバンドがこれから進む道は、一味も二味も違うかもしれない。天使も悪魔も知らぬ存ぜぬだが、彼らはこれからも本当に人間が進化したと思えるまでラブソングを歌い継ぐ。