DISC REVIEW

ART-SCHOOL『スカートの色は青』


―彼女のヒトミの中に―
  
 発明家がすごいのは、何もないところから何かを作り出すことにある。つまりゼロからイチを生み出すことが最も素晴らしいことなのだ。
 初めてのものはなんでも素晴らしい。言うまでもなく、初めて異性と繋がり合った瞬間は表現しようの無いものである。しかし、どんなものであれ、繰り返せば繰り返すほど、長く続ければ続けるほど、最初の感動や初期衝動は薄れていってしまう。
 ART-SCHOOLの既発曲に「SKIRT」という曲があり、今回の曲名は「スカートの色は青」。これを安直に並べてみて、安易に今回はその続編だと考えたとき、スカートの色を青と特定したということは、ある種、見る視点が変わったためだと思う。
 木下理樹が書く歌詞の多くには、女性への強い思いが詰め込まれている。前作もスカートの色が忘れ去れないことを歌い、その衝動的な気持ちが曲のスピード感とあいまって、サディスティックな楽曲となっていた。今回は揺れるスカートが出てくる。ゆっくりとしたテンポで、ゆったりした描写と重なり、思いを反芻していく。
    ART-SCHOOLは活動休止から復帰後、悲しみそのものを包み込むバンドに変わった。だから同じ事柄を歌ったとしても、やさしい表現方法となっているのだ。そう、それはまるで女神の様に。
 誰にでも、忘れられないスカートの色があるとしよう。もしそれが初めて繋がった異性のものならば、どれだけ色あせたとしても一生消せない色と言えるかもれない。だから木下理樹の瞳にこびり付いているスカートの色は最初から青だった。
 と言いつつも、結局これは男子側の視点であって女子側の視点では無い。言うなれば、スカートへの情熱を歌った「SKIRT」が男子目線だとするなら、そんな男子を冷静に見据える女子目線の曲が「スカートの色は青」だと捉えることができるのではないか。だからCDジャケットでは切れているのだ、青いスカートを穿く女性の瞳が。と思い、ふと怖くなった。
 そんな、訳知り顔な男女の構図がありありと描かれてしまったのではないか、意図せずかもしれないが。
 でもこういう歌詞を書いてしまう木下理樹、嫌いじゃない。