2020-01-01から1年間の記事一覧

LIVE REPORT

ROTH BART BARON Tour 2020-2021 『極彩色の祝祭』 2020.12.5 in 京都磔磔 おそらくはみんなわかっていた。 『極彩色の祝祭』のツアーだから、1曲目は「Voice(s)」であることを。そして観客が1曲目を予感していることを。アメリカ国旗があしらわれた、紺色の…

DISC REVIEW

Turntable Films 『Herbier』 ―プラスティック・ウイングスはロウの翼ではなく本当の希望になりえると信じること― 植物園というタイトルの意味とジャケットワークから京都出身らしい美意識と島国日本の密室感をイメージし、本作へアクセスした。 ほぼ全編英…

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CRYAMY 『#3』 ―イージーライダーが2020年に生まれるかどうかの告白― 誰でも嘘をつくことがある。そして本作は何がしかの嘘が出発点となっている。彼らが歌う「嘘」とは「希望」と同意語であり、理想と現実の狭間で揺れ動く感情がロックによって表現された結…

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カネヨリマサル 『心は洗濯機のなか』 ―ガールズという意味を探すために出発したバンドが歌うこととは?― 《私は銀杏BOYZになれない》(君が私を)という歌詞が、スリーピースガールズパンクバンドである彼女たちのすべてを物語っている。 女性だからカッコ…

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the paddles 『スノウノイズ/22』 ―粋なロックであると信じ続けるバンドの末路― ロックバンドというのは優秀であればあるほど弱さを提示できる。the paddlesの今回の曲たちは何れも弱さを提示している。「スノウノイズ」の男子としての弱さ、「ジパングカウ…

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ROTH BART BARON 『極彩色の祝祭』 ―不確かな言葉から意味のある言語を作り出すための絶望― ロックとは不確かな言葉から意味のある言語を作り出す行為でもある。 その顕著な例がレディオヘッドの『キッドA』だった。ロックの既存のフォーマットを脱し、エレ…

LIVE REPORT

『GRAPEVINE FALL TOUR』 2020.11.3 in オリックス劇場 GRAPEVINEを座って観ることも、彼らを上から臨むことも、私にとっては初めての体験だった。つまりはそれがFALL TOURの意味だった事にライブが始まってから気がつく事になる。結果的にライブハウスでは…

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テイラー・スウィフト 『フォークロア』 ―ロックは本当に死んだのか?〜in America〜― 2014年の『1989』は完璧なポップ・アルバムだった。それは今聴いても変わらない。そして2015年5月5日「THE 1989 WORLD TOUR LIVE IN JAPAN」の東京ドームで観たテイラー…

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UNISON SQUARE GARDEN 『Patrick Vegee』 ―君はなぜニンジンを残したのか?― 何度でも言おう。UNISON SQUARE GARDENはポップのフォーマットでロックを奏でてきた。そして今もしているし、これからもそうだろう。それはポップなロックをすることと同意語だと…

DISC REVIEW

BUMP OF CHICKEN 「アカシア」 ―新たな設計図の更新― 『TOUR 2017-2018 PATHFINDER』を観た時もその予兆はあったが、『aurora ark』のセットリストを見て、更にその思いを強めた。近年のバンプの大きなテーマが『ユグドラシル』の具現化であるという事に。そ…

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ラブリーサマーちゃん 『THE THIRD SUMMER OF LOVE』 ―3年目の浮気なんて...ラララ― 最近、著名人の不倫がよく報道されている。もちろん今に始まったことではないのだが、よく耳にする。そして、そういう事件に対して、男性側と女性側では明らかに見方が…

DISC REVIEW

BUMP OF CHICKEN 「Gravity 」 ―陽はまたのぼりくりかえす― 『Butterflies』で、藤原基央の作り出した旅人は、空想の世界から飛び出し現実の世界で「ファイター」となった。反対にバンプの4人は「Butterfly」として、空想の世界へみんなのバンプを体現する為…

DISC REVIEW

あいみょん 『おいしいパスタがあると聞いて』 ―君は昭和歌謡を聴かない?― どうしたって妄想癖は抜けない。あいみょんの昔の写真を見て元ヤンキーだと思い、デビュー後の写真に清純派アイドルのような印象を受けて、レコード会社のマーケティング手法を深読…

DISC REVIEW

小山田壮平 『THE TRAVELING LIFE 』 ―2020年ロックへの旅― ロック・バンドは長い活動期間の中で純なロックから一度離れることがあるが、いずれ彼らは戻ってくる。BUMP OF CHICKENにとっては『RAY』がそれにあたるものだった。andymori、ALを経て、初のソロ…

DISC REVIEW

ヨルシカ 『盗作』 ―没個性勝利の方程式― 2020年のガラパゴス化した日本のポップ・ミュージック・シーンを肯定的に捉え、多岐にわたっているのがDTM、ボカロ出身のアーティストであろう。それらの音楽が海外の音楽を遮断した上に成り立っていると言いたい訳…

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Official髭男dism 『Hello-EP』 ―旅立つすべての人のために― 高音ボイスはいつもポップに有効である。ボーカル・ピアノの藤原聡の声は正にそう。でも、なぜ『Hello-EP』というタイトルになったのだろう。 ピアノPOPバンド、Official髭男dismのサードEPは、エ…

COLUMN

『世界から音楽が消えた日』 2020年の初頭、世界から音楽が消えた。つまり、コロナ・ショックによって、予定されていたすべてのライブが中止になり、それ以降の公演も開催が見送られているという状況に至った。 4月7日に緊急事態宣言が全国に出されてからは…

DISC REVIEW

米津玄師 『STRAY SHEEP』 ―散弾銃をぶっ放せ― 米津玄師が『BOOTLEG』という作品を免罪符に、J-POPの世界に飛び込んでからもう3年になろうとしている。あれから元気にしているだろうか?そう思っていた時、彼から手紙が届いた。それがどんな手紙だったかとい…

DISC REVIEW

玉名ラーメン 『Sour Cream‐EP』 ―ラブとマネー― 2001年生まれの女性ラッパー、その名は玉名ラーメン。なんじゃその名前はと思って、玉名だから熊本出身かと思ったら、東京生まれらしい。本作での彼女のラップはどうも2020年を端的に表現しているようだ。 明…

DISC REVIEW

さユり 『め』 ―産業革命万歳― さユりという存在が登場してから数年がたったが、何かしら懐疑的な見方をしていたようだ。ギター片手にシンガーソングライターをしている福岡県出身の女性アーティスト。「酸欠少女」というキャッチコピーで、絶望から希望を作…

DISC REVIEW

踊ってばかりの国 『私は月には行かないだろう』 ―錠剤と戦争とレゲエ― 時として、歌詞にサリンジャーを使ってしまうのはありふれたものになってしまうのだが、戦争に対して並々ならぬ思いを持っている作家と同様に、戦争に対しての言葉を紡いできた下津光史…

DISC REVIEW

くるり 『thaw』 ―狂いゆく男― くるりの音楽とは、岸田繁の精神世界の吐露をギリギリで抑えた結果、あふれ出た結晶なのかもしれない。本作はコロナ・ショックによる自粛を見越して製作された、くるりの未発表音源アルバムである。 『魂のゆくえ』期に創られ…

DISC REVIEW

KOHH 『worst』 ―消えた玄人と増え続ける素人Ⅱ― 最近ラップ・ミュージックをしている人たちの中で引退という言葉が流行っているようで。つもりこれは、政治家が辞職しないと言って、その後必ず辞めることや、プロレスラ―が引退と言ってなんども復活するよう…

DISC REVIEW

チャイルディッシュ・ガンビーノ 『3.15.20』 ―限りなくホワイトに近いブラック― 二宮和也が昔、読売新聞の日曜版だったと思うが、俳優をやっている自分はあくまで仕事であり、どれだけ認められても結局家でゲームしているときが一番楽しいというようなこと…

DISC REVIEW

清春 『JAPANESE MENU』 ―清春的孤独のグルメ― ダウンタウンなうに清春が出演した時、“伝説のロッカー”と紹介されていて、もうそんな存在になったのかと時間の刻印を感じていた。 今作は、2016年の『SOLOIST』の続編だと私は捉えている。それ以降の『エレジ…