DISC REVIEW

Turntable Films

『Herbier』

 

―プラスティック・ウイングスはロウの翼ではなく本当の希望になりえると信じること―

 

植物園というタイトルの意味とジャケットワークから京都出身らしい美意識と島国日本の密室感をイメージし、本作へアクセスした。

ほぼ全編英語で歌われる中、ハイライトは「Shape Your Town」。もっとも内実を現した歌詞が含まれる。《君は一生懸命に働いたことがない/間違ってないさ》の訳詞で私たちが置かれている箱庭を揶揄し、その理由を《それは信用に値しない愛情》という訳詞で、この空間には愛が存在していないことを冷酷に諭す。

彼らは植物男子みたく植物を愛でるように音楽を紡ぐ。しかし描いた植物園を楽園だとは言っていない。この密室を脱するための方法を、自分にあるプラスティック・ウイングスをロウの翼ではなく本当の翼にするすべを考えている。

彼らにとってそれは、アメリカン・ロック寄りのドライなメロディの力で内圧を高め、フォーク・ロックのオーガニックな力で外側に大放出させて、自らの手で、この植物園を破壊し新たな街を作り出す事だった。