DISC REVIEW

ケプラ
『20』

ー多様性によって生まれた一つの化身ー

多様性によってロックは一度死んだ。しかし、ケプラとは多様性によって生まれたロックからのアンサーと言えるだろう。今まであった既存の形あるものを壊すためにロックとはあった。しかしパンデミックと戦争によってそのすべては失われたと言えよう。壊すことに意味を見いだせなくなったロックには死しかなかったのは言うまでもない。

旧来のロックが死滅した荒地から何を生み出すことが出来るのか?僕たちはまだ答えを見出せずにいる中。青春や恋、若さからくる瑞々しさをそのままの純度でロックに落とし込む事をケプラは難なくクリアした。今のところは。ロックとは刹那でいい。数年後に機能しなくても今だけ輝ける曲であればいい。そんな価値観を多様性の最たるSDGsが阻んでいる事に気付く。

ロックが作り上げた様式美の最たる建築物は既に朽ち果てた事は知ってるよね。なら今から何を作ればいいの?というクエッションはすべてのバンドに突きつけられている。ケプラが現時点で提示した答えとは、be made of〜からbe made from 〜への変化といえるだろうか。ロックを、原料にした事が見た目でわかるロックでは無く、見ただけでは分からないロックをケプラは抽出しているのかもしれない。

本作の楽曲の発表時期を見ると2021年〜2024年。彼らが青春を駆け抜けた時期は良くも悪くも多様性が世界を揺るがしていった時期といえる。彼らの楽曲はそんな時期のタイムラインにリアルな刻印を打ち続けていたのだろう。今のアーティストに見られるJ-POPからの適切な抽出性と、洋楽の表現とのヴィヴィッドな最適化。それらを駆使しながら、多様性によって生まれたケプラのロックはあくまでも病的に青春を叫び続けているのである。