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ROHITOのロカリロロロ

ロック評論家 ROHITOのブログ

DISC REVIEW


KOHH『DIRT』

―LIVE AND LET DIE―
 
    “この街で生きている半数の人は死人だ”      昔観た仏映画のセリフをまた思いだしていた。そう思った理由は、このKOHHの『DIRT』という作品が“生身の自分で生きる”ということを痛烈に提示したものだからだ。
    今の世間一般を見てみると、“誰々みたいになりたいという”思いがそこらじゅうに闊歩しているように感じる。あの有名人みたいになりたい、だから、その人のSNSをフォローして真似て。そして次にそうやっている自分自身をネットにアップして今を表現する。そこには今を重要視する価値観から生まれた行為の、数珠つなぎがあり、いわゆる一個人の個性を生かすという名目のもと増殖していくのだが。結果的にそれは、お一人様というカテゴリーに含まれる行為となるのだ。
    その反対に、人々は昔以上にもっと人との繋がりを求めるようになった。つまりそれは、逆説的に言えば今持っている絆が希薄だと本当は気が付いているからなのだ。そう、そんな絆は簡単に壊れてしまう。YouTUBEで簡単に人の真似をして、簡単に死を選択して、また簡単に人を殺める。挙句の果てに誰かに見られるという前提で見た目を良くするという整形。そして、それを善とする風潮。今私たちが住んでいる社会は、何もかも簡単に出来るがゆえに、一人でできると勘違いして、それでもつながりを求めようとして、間違った方法で自分自身を変えてしまう。まさに私たちは、今という世界の遭難者なのだ。
    この2016年を生きるHIP HOP MC、KOHH。彼はこんな世界で、こんな風にライムする。〈死ぬまで生きれば絶対死にやしない〉この作品に歌詞カードは付いていない、でもそう歌っているのだろう。こんなにも簡単な言葉で、こんなにも難しい内容を突き付けてくるKOHHはおそろしいアーティストだと言っていいと思う。
    本当の生身の自分で生きるということ。これは難しい。でもその一つのガイドが示された作品である。さあ、あなたは生きているか死んでいるかどっち?


あ~、私も生きているんだろうか…