DISC REVIEW

GRAPEVINE『Arma』

 ―継続は力なりと言わない、こともない―

    多分、新聞で読んだと思うけど、漫画家の尾田栄一郎秋本治に、なぜ休まず継続できるかを聞いた、すると一言「頑張るんだよ」と言ったらしい。
 田中和将に、ずっと作品を出し続けるってすごいですねと言ったところで彼は、「いや、ずっと地続きでやっているんで…」と、はぐらかしそうな気がする。
 バンド活動という地平線が続く中で、音楽的な変化は常にあった、そして時にとんでもなく明るい楽曲が産み落とされることがある。例えば、既発曲「放浪フリーク」はそれに当たる。「Arma」も同様に陽性でポップな展開が見られる。
 音楽的には、その先を予感させるように、曲の根底に渦巻くフィードバック・ギターの流れと、星の瞬きの様にキラキラと鳴らされるキーボードの音色がガイド役となり、彼らとしては珍しくブラスをバックに挿入、祝福を醸し出すが如く鳴り響く。
 歌詞は、いつになく詩人田中のニヒリズムが炸裂しているといっていいかもしれない。曲名「Arma」はラテン語で武器や鎧という意味を持つ。でも、この単語を一文字変えると「Alma」となり、これはスペイン語で魂という意味になる。さらにAlmaは女性名にも使われるものである。
 この昔あった英会話CMのような、一文字替えトリックをもとに次の歌詞を聴くと、違った二つの意味が感じられるようだ。

 “例えばほら/きみを夏に喩えた/武器は要らない/次の夏が来ればいい”

    またナツノヒカリが過ぎていく。次の夏を待とう。
 GRAPEVINEデビュー20周年おめでとうございますとは言わない、こともない。