DISC REVIEW

GRAPEVINE

『Gifted』

 

―悪乗りジョニーは死んだ―

 

是迄の世界は例の件で唐突に幕を閉じた。可能性の光は幾つも消え、SNSは偽りの絆を示したまま明滅している。世界を嘲笑した悪乗りジョニー、バインはここにいたはずなのだが。

冷や水をかけるような田中和将の歌詞と亀井亨のエモーショナルな旋律が交わる鉄板のスタイルで、音数の引き算に即した近年のバンドアンサンブルとは異なり、2008年頃の彼らを彷彿させる密に徹した音像のロックを繰り広げる。

宮崎駿は90年代に、世相の動きに追いつけるよう、自身の映画作品の中でより難解なモチーフと対峙していった。2020年、表現者は自ずとコロナというモチーフに向き合わざるを得なくなった。バインはどうか。もちろん向き合っていた。しかし、《ここでそれを嗤っている者/どれもこれももういい》の歌詞で、何かが終わった事を知る。

松本人志は、罰ゲームはパワハラではないという。何故なら自身も罰ゲームを受ける側に立つ事があるからだ。戦う人の横で笑っていたいと言った田中和将がついに自らにも冷や水をかけた。バインはこの曲で、バイン自体を対象化し、過去のバインを否定する。恵まれていた世界は終わりを告げるのか?それでも、僕らなら。