DISC REVIEW

BUMP OF CHICKEN

『Small World』

 

―Small Worldとは、藤原基央の根源にあるマイノリティがマジョリティを凌駕する瞬間であり、バンプにしか作り出せない死生観の在り方でもある―

 

2019年の『aurora arc』で4人がコクーンとしてのバンプを巣立ったことは、ひとつの節目だった。その結果、メンバーそれぞれが個々のバンプ感を背負うという運命に導かれ、新たな旅立ちに至る。

それは同時に、僕たちにとってもこれまでのバンプの消失を意味する、という事に気が付かねばならなかった。ただ、永く共に旅してきた者であるならば、その解決法は心得ている。何かを失う事は何かを得ること。当然、僕たちは新たなバンプを見つける事が出来るとすぐに気がつく。

小さいバンプみぃ~つけた。僕たちは此処で、僕たちなりの小さなバンプを見つけることになった。実は、それは藤原基央が幼少期に見つけたスモールワールドの素と相似形となり得るものであり、君との邂逅の歌詞によって語られている。それぞれの中にある小さなバンプは思いがけず伝播していく。その先で、とてつもなく大きなものを動かしてしまう、そんな可能性を示唆しながら曲は進む。

いずれ、そのスモールワールドが世界を変える時が来るかもしれない。形だけの多様性はいつか崩壊するだろうし、自分が信じるものを壊してまで、関係ないものに染まる必要はあるだろうか。小さくても、自身が信じた世界が、大きな世界を超えることが出来るかもしれない。まさにマイノリティがマジョリティを凌駕するが如く。その瞬間を追い求めたバンプダイバーシティの在り方の提示が、確かに此処に存在している。それこそが、藤原基央のロックの本質的な強さの根源でもあるのだ。