LIVE REPORT

CRYAMY 

-red album-RELEASE TOUR[建国物語]

大阪 Live House Anima

2021.11.6


リリースツアーのセミファイナルである本公演。スリーピースガールズバンドTETORAとの対バンによって、カワノは新たな気づきを得る事になったとMCで語った。それは、ライブMCで長々と喋る事に批判的な意見もこれまであったが、今回自分の表現形態が間違いではなかったと再認識出来た。何故なら上野羽有音も同じようにライブMCで熱く思いを語るタイプだったから。その姿を見て共感を覚えたというのだ。

CRYAMYの音楽を表す上で、エモとメタル、そしてカワノにあるフォーク的思想、この3つは欠かせない。(だから今夜も披露された“月面飛行”、“世界”は3つを兼ね揃えているという点で、ライブにおいても一級品の地位を退いていない。)その中で、カワノが音楽と同じくらいMCで熱くしゃべくるという表現はフォークシンガーの佇まいからきている。そして語る事はロックで時に突っ走る。今回も「みんなが死ぬ時は俺も死ぬから」と言い、演奏後に「さっきは言い過ぎた」と撤回するこの一連の流れもいにしえのロックバンドらしい。

『赤盤』で彼らが伝えたい事の一つは、目の前のあなたを救うために自分が変わるということだ。ツアーでのカワノの発言からも、その視点は一貫している。夢を変えてでも叶えるとか、今夜の「愛されるためにまず相手を愛する」など基本的には同じ視点だ。

結果的にツアーのこの時点にきて、明らかにCRYAMYは変わろうとし、確実に過渡期に差し掛かっているだろう。今夜のアクトを観て、カワノがカワノとして生きるために正常になろうとしているように感じた。おそらく、その過程でこれまで合致していたバンドサウンドとの、微妙なズレが生じてきている気がした。つまり、クリーミーがバンドとして生き抜く為の方法論を模索する過程で、バンドに内在するパワーのベクトルが新たに摩擦係数を増やしている瞬間であり、まさにバンドが成長する生き物であるという証を端的に表した一夜だったと言える。

カワノが最後に語った。冷たいことをいうようだけど、自分自身の悲しみというのは人には理解してもらえないのだ、ということ。「自分を守れるのは自分だけだ」という発言は、CRYAMYが生き抜くために自分自身を守っていく、その必然性によって生まれた言葉なのだ。