COLUMN

『世界から音楽が消えた日』 2020年の初頭、世界から音楽が消えた。つまり、コロナ・ショックによって、予定されていたすべてのライブが中止になり、それ以降の公演も開催が見送られているという状況に至った。 4月7日に緊急事態宣言が全国に出されてからは…

DISC REVIEW

米津玄師 『STRAY SHEEP』 ―散弾銃をぶっ放せ― 米津玄師が『BOOTLEG』という作品を免罪符に、J-POPの世界に飛び込んでからもう3年になろうとしている。あれから元気にしているだろうか?そう思っていた時、彼から手紙が届いた。それがどんな手紙だったかとい…

DISC REVIEW

玉名ラーメン 『Sour Cream‐EP』 ―ラブとマネー― 2001年生まれの女性ラッパー、その名は玉名ラーメン。なんじゃその名前はと思って、玉名だから熊本出身かと思ったら、東京生まれらしい。本作での彼女のラップはどうも2020年を端的に表現しているようだ。 明…

DISC REVIEW

さユり 『め』 ―産業革命万歳― さユりという存在が登場してから数年がたったが、何かしら懐疑的な見方をしていたようだ。ギター片手にシンガーソングライターをしている福岡県出身の女性アーティスト。「酸欠少女」というキャッチコピーで、絶望から希望を作…

DISC REVIEW

踊ってばかりの国 『私は月には行かないだろう』 ―錠剤と戦争とレゲエ― 時として、歌詞にサリンジャーを使ってしまうのはありふれたものになってしまうのだが、戦争に対して並々ならぬ思いを持っている作家と同様に、戦争に対しての言葉を紡いできた下津光史…

DISC REVIEW

くるり 『thaw』 ―狂いゆく男― くるりの音楽とは、岸田繁の精神世界の吐露をギリギリで抑えた結果、あふれ出た結晶なのかもしれない。本作はコロナ・ショックによる自粛を見越して製作された、くるりの未発表音源アルバムである。 『魂のゆくえ』期に創られ…

DISC REVIEW

KOHH 『worst』 ―消えた玄人と増え続ける素人Ⅱ― 最近ラップ・ミュージックをしている人たちの中で引退という言葉が流行っているようで。つもりこれは、政治家が辞職しないと言って、その後必ず辞めることや、プロレスラ―が引退と言ってなんども復活するよう…

DISC REVIEW

チャイルディッシュ・ガンビーノ 『3.15.20』 ―限りなくホワイトに近いブラック― 二宮和也が昔、読売新聞の日曜版だったと思うが、俳優をやっている自分はあくまで仕事であり、どれだけ認められても結局家でゲームしているときが一番楽しいというようなこと…

DISC REVIEW

清春 『JAPANESE MENU』 ―清春的孤独のグルメ― ダウンタウンなうに清春が出演した時、“伝説のロッカー”と紹介されていて、もうそんな存在になったのかと時間の刻印を感じていた。 今作は、2016年の『SOLOIST』の続編だと私は捉えている。それ以降の『エレジ…

DISC REVIEW

BUMP OF CHICKEN 『aurora arc』 ―BUMP OF CHICKENとは藤原基央にとって何だったのか― バンプと藤原基央の関係性が大きく変わった。その予兆は前作からあったが、今回で確信を持った。 《Sir Destiny、俺の夢って何だったっけ?何が ここまで俺を動かしてい…

DISC REVIEW

踊ってばかりの国 『光の中に』 ―それでも音楽だけは裏切らないと言えるあなたへ― 《彼は光りの中に自足していた。この印象が私を搏った。春の光りや花々の中で、私の感じる気恥かしさやうしろめたさを、彼の持っていないことが、その姿を見てもわかった。彼…

DISC REVIEW

KOHH 『UNTITLED』 ―令和の国の名前の無い若者たち― Hi!僕はね(何?)・・・僕の名前は(誰?)・・・「マイ・ネーム・イズ/エミネム」 最近、ぼくりりが引退した。彼がメディア等で語っていたように、周りが作り上げた「ぼくのりりっくのぼうよみ」とい…

DISC REVIEW

GRAPEVINE 『ALL THE LIGHT』 ―すべてがオールライトになる― 三つ子の魂百までというが、私の場合、何がしたいか分からん行動をする子だったという。掃除機を壊した事もあるのだと。 『ALL THE LIGHT』を聴いた。何故か森博嗣の『すべてはFになる』が頭を過…

DISC REVIEW

シャムキャッツ 『VIRGIN GRAFFITI』 ―椿と烟よ、永遠に― 両手で水を掬っても両端からこぼれてしまうように、人は掴めそうにないものを掴もうとする。ないものねだりでも、何度もする。回数を重ねるごとにその悲しさも理解しているはずなのに。 究極的には、…

LIVE REPORT

OBLIVION DUST "Us Against Them Tour" 2018-19" in 名古屋 Electric Lady Land 2018年12月23日 1曲目は最新作から“Death Surf”という順当な始まりだった。ツアー・タイトルから、今回のライブがファンのために行うツアーであることを窺わせる。KEN LLOYDのS…

LIVE REPORT

踊ってばかりの国 「2018年、秋のワンマンライブ」 in 梅田 Shangri-La 2018.11.4 SEは"ocean" オルガンの調べが鳴り、メンバーが登場した。 2曲目でジャケットを脱いだ下津光史は、白Tシャツをジーンズにインという出で立ちで、ギターのストラップを目一杯…

DISC REVIEW

上坂すみれ『ノーフューチャーバカンス』 -ロックは本当に死んだのか?- “あなたがもう忘れてしまったとしても、きっと、次の未来でまた出会える。 わかってしまった世界のことも、きっと散々だって、笑い飛ばすことができる。 だから、思い出して、少しで…

DISC REVIEW

シャムキャッツ 『Friends Again』 ―シャムキャッツがシャムキャッツでいるために― シャムキャッツってバンド名になぜ決まったのか、私は知らない。どこかのインタビューでメンバーが質問されて、答えているのかもしれないが…。それをいいことに勝手に考えて…

DISC REVIEW

踊ってばかりの国 『君のために生きていくね』 ―消えた玄人と増え続ける素人― 日本では玄人が消えていき、素人が増えてきている。それは色んな職業の人の現状を見ればわかる。汚職刑事や教師の犯罪。本来プロでなければいけない人たちが、プロとしてあるまじ…

DISC REVIEW

ART-SCHOOL『In Colors』 ―パラダイス・ロストの次の景色― ふと3rdアルバム『PARADISE LOST』を思い返す。本作は、これの次に鳴るべき音だったんじゃないかと思った。2005年はアートが自身のバンド・サウンドに、音響系やダンス・ミュージックを取り入れた転…

COLUMN

『ネットの恩恵と代償が、僕たちと音楽の繋がりをどう変えたか』 ー 2015年6月28日 ー 先日、美容室に髪を切りに行った。その時、RADIO HEADを好んで聴いていたという店長が、「あの頃と(90年代)比べて、今の音楽って全然変わりましたよね~」とそれに対し…

COLUMN

BUMP OF CHICKEN『世界でひとつだけのRAY』~バンプから貴方へ~ ー2014年7月6日ー すべての始まりには闇がある。その闇か抜け出す為には、道標となる光が必要になり、人によってそれは音楽だったりする。思春期特有の絶望感は、誰でも少し…

LIVE REPORT

BUMP OF CHICKEN 『TOUR 2017―2018 PATHFINDER』 inさいたまスーパーアリーナ 2018.2.11 ―4人が探検者になった日と私たちがそれを目撃した日― 2017年から2018年にかけて行われたBUMP OF CHICKENのツアー『FATHFINDER』ファイナルを観た。チャマの発言にもあ…

DISC REVIEW

米津玄師『BOOTLEG』 ―オッケ〜 J-POP!― 「こんな日々すら万が一夢幻ならどうしようか。まあそんならそれで大歓迎、こんにちは元の鞘」―――そんな風に毎日考えてみる。そもそもこんな日常で満足していいの?いや、お前は恵まれているからそんなことが言…

DISC REVIEW

CRUNCH『てんきあめ』 ―take care.ー “はやりやまいはやはりやばい” とある駅舎で、綿矢りさの『蹴りたい背中』がすごいと友達が勧めてきた。この冒頭の一文が韻を踏んでいるところ。まずそこが凄いと熱弁してきた。当時は00年代初頭、海外ではロックにヒッ…

DISC REVIEW

GRAPEVINE『ROADSIDE PROPHET』 ―グレイプバインという名の進化論― 不確かな記憶だが、田中和将はフランス映画とか渋谷系が苦手だったそうな...。私はそれに対してツッコミたい。グレイプバインほどフランスっぽい日本のバンドはいやへんし、渋谷系以上に渋…

LIVE REPORT

GRAPEVINE TOUR 20172017.10.15in Live House浜松窓枠 ―ROADSIDE PROPHETの行く末― 2017年のツアーを終えたときグレイプバインがどんな変化を遂げているかは分からない。だが、ツアー序盤のLive House 浜松窓枠公演を見て、20周年のその次を見据えたバインな…

ROCK CLASSIC

T.レックス『電気の武者』T.REX『ELECTRIC WARRIOR』 ―T.レックス創成期― だいぶ前の話だが、今のロック・バンドはみんなレディオ・ヘッドになろうとしていると、マドンナが言っていたらしい。 小さなコンプレックスに悩まされて人は誰でも誰かになろうする…

ROCK CLASSIC

ニール・ヤング『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』NEIL YOUNG『AFTER THE GOLD RUSH』 ―失われた共通言語― ~序章~1970年。世界はまだ一つの言語で成り立っていた時代(?)全ての宝は持ち去られた後だったが、まだ言葉は通じる世界だった。そして、2017…

DISC REVIEW

GRAPEVINE『Arma』 ―継続は力なりと言わない、こともない― 多分、新聞で読んだと思うけど、漫画家の尾田栄一郎が秋本治に、なぜ休まず継続できるかを聞いた、すると一言「頑張るんだよ」と言ったらしい。 田中和将に、ずっと作品を出し続けるってすごいです…