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くるり 『I Love You』 -ラブソングはくるりんぱと- 日本で、日本人にしか歌えない世界水準のポップソング=ラブソングを歌うのがくるりだ。 本曲は「2034」や「Liberty&Gravity」の傾向を引き継ぎながら、『songline』でのくるり節復活を経て、未発表音源…

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GRAPEVINE 『Gifted』 ―悪乗りジョニーは死んだ― 是迄の世界は例の件で唐突に幕を閉じた。可能性の光は幾つも消え、SNSは偽りの絆を示したまま明滅している。世界を嘲笑した悪乗りジョニー、バインはここにいたはずなのだが。 冷や水をかけるような田中和将…

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CRYAMY 『CRYAMY-red album-』 ―最期はロックに救われたと言って死にたい― ロックはまだ生きている。 20年代の日本で酒と女とロックンロールを体現出来る若手バンドがCRYAMYだ。 荒くれた事を歌っている訳ではなく、たわいもない事をサラッと歌詞にして結果…

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佐藤 千亜妃 『声』 ―タイムライン・タイムラグ― 名曲の定義の一つは時間を止める力がある事だ。音楽を聴いていると時間は永遠に感じる。それは何故かというと時間が止まっているからなのだ。 きのこ帝国の「東京」は名曲だった。改めて何故名曲なのか考える…

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lyrical school 『Time Machine』 ―フィメールラッパーは笑わない― ハルカリも上松秀実もクールだった。そして同じようにlyrical schoolもクールになった。本曲のクールなトラックとリリックを歌う彼女達は2020年代的だ。 リリスクが始まった2010sは時代的…

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80KIDZ&AAAMYYY 『Magic』 ―謎解きはパンデミックのあとで― 80KIDZのAL『ANGEL』から先行配信されたAAAMYYYとのコラボ曲。作詞がAAAMYYY。作曲が80KIDZのメンバーJUN、ALI&との共作。 AAAMYYYにスポットを当て本曲を捉えると、昨年のShin Sakiura feat.AAAMY…

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BUMP OF CHICKEN 『Flare』 ―《全て君が正しい》もう一度、ハートに火をつけて― 近年のバンプのテーマは『ユグドラシル』の再定義にある。改めて振り返るとAsgard:神の世界から始まり、Midgard:人間の世界で終わる。この二つのギターソロが繋がり円環は閉…

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足立佳奈 『まちぼうけ』 -21才の足立佳奈が歌うべき事とは何カナ?― 2017年デビューのZ世代SSW。パワフルな応援ソングの歌い手から徐々に変化してきた彼女。2021年最初の配信SGは明確な分岐点になった。 「話がある」や「二子玉川」での洗練されたエモさに…

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CRYAMY 『YOUR SONG』 ―英雄なき世界へ向けた言葉― 5曲入り3rdシングル。ツアー再開後発売の本作はコロナ過の閉塞感を適切にロックへ昇華する。 1曲目弾語りは初。「HAVEN」では《どこかに行きたいのに/どこにも行けない》という歌詞が2020年に立向う姿勢を…

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CRYAMY 『GUIDE』 ―37.4℃の現在地― 彼等の4曲入り2ndシングル。コロナでライブが延期になったことで急遽作ることになったことを考えれば、その意味も含まれているのかもしれない。 「ディスタンス」再録(1st EP「#2」収録)では、ボーカル強め、各楽器…

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CRYAMY 『#3』 ―あなたはもう忘れたかしら― 6曲入り3rd EPで、CRYAMYが描くロックとは何かが明確になった。 6分49秒の「世界」。古典的なロックの律動とエモでポップな旋律、それに最適な声質が日本の70sフォークソング的抒情詩を描く。間奏からの《街を照ら…

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CRYAMY 『crybaby』 ―フォークソングとエモの邂逅― 4曲入り1st シングル。益々Gt/Voカワノの歌が肝になってきた。「Pink」は1st demoからメタル感が増し正式音源へ。そして次の「物臭」が本作の肝。《誰かに言うような劇的なことなんてないし/あなたが言うよ…

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CRYAMY 『#2』 ―絶望の再定義― 彼らの5曲入りの1st EP。現在のメンバーが揃った最初の作品でもあるが、今回でバンドのテーマ性の輪郭みたいなものが、おぼろげながら現れてきた。それが“絶望の再定義”だと思う。 「テリトリアル」は1st demoから正式な音源と…

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CRYAMY 『#1』 ―日本語ロック再興― 3曲入り1st demo。バンド名はcreamのスペルミスから生まれたらしい。そこからスペルミス繋ぎでクライ・アーミーと読むと、RADWIMPSみたく強さと弱さを両立したバンドだと妄想ができる。しかしあながち違いでもないだろう。…

LIVE REPORT

ROTH BART BARON Tour 2020-2021 『極彩色の祝祭』 2020.12.5 in 京都磔磔 おそらくはみんなわかっていた。 『極彩色の祝祭』のツアーだから、1曲目は「Voice(s)」であることを。そして観客が1曲目を予感していることを。アメリカ国旗があしらわれた、紺色の…

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Turntable Films 『Herbier』 ―プラスティック・ウイングスはロウの翼ではなく本当の希望になりえると信じること― 植物園というタイトルの意味とジャケットワークから京都出身らしい美意識と島国日本の密室感をイメージし、本作へアクセスした。 ほぼ全編英…

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CRYAMY 『#3』 ―イージーライダーが2020年に生まれるかどうかの告白― 誰でも嘘をつくことがある。そして本作は何がしかの嘘が出発点となっている。彼らが歌う「嘘」とは「希望」と同意語であり、理想と現実の狭間で揺れ動く感情がロックによって表現された結…

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カネヨリマサル 『心は洗濯機のなか』 ―ガールズという意味を探すために出発したバンドが歌うこととは?― 《私は銀杏BOYZになれない》(君が私を)という歌詞が、スリーピースガールズパンクバンドである彼女たちのすべてを物語っている。 女性だからカッコ…

DISC REVIEW

the paddles 『スノウノイズ/22』 ―粋なロックであると信じ続けるバンドの末路― ロックバンドというのは優秀であればあるほど弱さを提示できる。the paddlesの今回の曲たちは何れも弱さを提示している。「スノウノイズ」の男子としての弱さ、「ジパングカウ…

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ROTH BART BARON 『極彩色の祝祭』 ―不確かな言葉から意味のある言語を作り出すための絶望― ロックとは不確かな言葉から意味のある言語を作り出す行為でもある。 その顕著な例がレディオヘッドの『キッドA』だった。ロックの既存のフォーマットを脱し、エレ…

LIVE REPORT

『GRAPEVINE FALL TOUR』 2020.11.3 in オリックス劇場 GRAPEVINEを座って観ることも、彼らを上から臨むことも、私にとっては初めての体験だった。つまりはそれがFALL TOURの意味だった事にライブが始まってから気がつく事になる。結果的にライブハウスでは…

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テイラー・スウィフト 『フォークロア』 ―ロックは本当に死んだのか?〜in America〜― 2014年の『1989』は完璧なポップ・アルバムだった。それは今聴いても変わらない。そして2015年5月5日「THE 1989 WORLD TOUR LIVE IN JAPAN」の東京ドームで観たテイラー…

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UNISON SQUARE GARDEN 『Patrick Vegee』 ―君はなぜニンジンを残したのか?― 何度でも言おう。UNISON SQUARE GARDENはポップのフォーマットでロックを奏でてきた。そして今もしているし、これからもそうだろう。それはポップなロックをすることと同意語だと…

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BUMP OF CHICKEN 「アカシア」 ―新たな設計図の更新― 『TOUR 2017-2018 PATHFINDER』を観た時もその予兆はあったが、『aurora ark』のセットリストを見て、更にその思いを強めた。近年のバンプの大きなテーマが『ユグドラシル』の具現化であるという事に。そ…

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ラブリーサマーちゃん 『THE THIRD SUMMER OF LOVE』 ―3年目の浮気なんて...ラララ― 最近、著名人の不倫がよく報道されている。もちろん今に始まったことではないのだが、よく耳にする。そして、そういう事件に対して、男性側と女性側では明らかに見方が…

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BUMP OF CHICKEN 「Gravity 」 ―陽はまたのぼりくりかえす― 『Butterflies』で、藤原基央の作り出した旅人は、空想の世界から飛び出し現実の世界で「ファイター」となった。反対にバンプの4人は「Butterfly」として、空想の世界へみんなのバンプを体現する為…

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あいみょん 『おいしいパスタがあると聞いて』 ―君は昭和歌謡を聴かない?― どうしたって妄想癖は抜けない。あいみょんの昔の写真を見て元ヤンキーだと思い、デビュー後の写真に清純派アイドルのような印象を受けて、レコード会社のマーケティング手法を深読…

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小山田壮平 『THE TRAVELING LIFE 』 ―2020年ロックへの旅― ロック・バンドは長い活動期間の中で純なロックから一度離れることがあるが、いずれ彼らは戻ってくる。BUMP OF CHICKENにとっては『RAY』がそれにあたるものだった。andymori、ALを経て、初のソロ…

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ヨルシカ 『盗作』 ―没個性勝利の方程式― 2020年のガラパゴス化した日本のポップ・ミュージック・シーンを肯定的に捉え、多岐にわたっているのがDTM、ボカロ出身のアーティストであろう。それらの音楽が海外の音楽を遮断した上に成り立っていると言いたい訳…

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Official髭男dism 『Hello-EP』 ―旅立つすべての人のために― 高音ボイスはいつもポップに有効である。ボーカル・ピアノの藤原聡の声は正にそう。でも、なぜ『Hello-EP』というタイトルになったのだろう。 ピアノPOPバンド、Official髭男dismのサードEPは、エ…