DISC REVIEW

長澤知之

『LIVING PRAISE』

 

―世界の中心で人生賛歌を叫ぶ―

 

長澤知之は元々恋愛の伝道師である。恋愛対象は音楽であったり、異性であったり。それについて彼は、時に大々的に歌い上げ、時に事実を淡々と伝えてくれる。

アコースティックギターを片手に、フォークやロックをブルージーに歌い上げる姿は、如何にも古典を伝承する者の佇まいを持つ。ただ、ことロックとなると古めかしさだけではなく、常に生々しさが無くてはいけない。ロックを歌う者はその壁に向き合う義務があり、彼もその一人。

少なからずロックとのソーシャルディスタンスを考量していた彼に、図らずも影響を与えたのはALとしての活動である。盟友である小山田壮平も同様に、その後のソロ活動で変化が見られた。この二人が得たものとは、ロックの可能性の再認識と言えるだろう。おそらく、AL活動後の作品「ソウルセラー」「SLASH」での、ロックな解放感にも一役買っているのかもしれない。

しかしこれで仕事は終われない。ブルージーにフォークを奏でるという佇まいにロックを落とし込んでこそ、彼らしい音楽として結実するからだ。伝道師が遂に、本作の中心で恋愛を叫ぶ!ロックの自由性を信じた結果、今まで以上に悲哀や滑稽さが表出する、長澤知之的人生賛歌にふさわしい作品となった。つまりそれに共鳴できる人にとっても、同質のものに成り得るだろう。