DISC REVIEW

ゆうらん船

MY REVOLUTION

ー消せない侘び寂びは涙の渦に帰するだろうー


MY REVOLUTION』の意味が彼らのテーマである古き良きロックからの新たな旅立ちである事は、ほぼ間違いないはず。ブリティッシュ・ロックやフォークをルーツとし、70sの日本のロックを参照しつつ、ロックンロール・リバイバルを近接点に歩んできたバンドは、このままでいいという港から錨を上げる事を選んだのだ。

つまりそれはコマーシャルに変化した彼らという事になるだろう。今まで作り上げたスタイルを維持しながらも、日本の90年代末期から00年代初期のロックを彷彿させるサウンドにシフトした部分がある。特に最初の3曲は明らかにリスナー・フレンドリーな心地よさがある。もちろんオルタナとして、ジャズや現代音楽、サイケデリックなどの要素を取り入れ、匠な集団を露わにする楽曲も多分にある。

それにしても、ソウルの蜃気楼を今だに探すJ-POPとか、もうそろそろクールに決め続けるのは限界なのでは。本当にすべきは涙のキッスをもう一度と言い続ける事、それの方がよっぽど正しいような気がしてきた。意味通りのエモさが最終的に必要になってきている。日本的なわびさびだよ。

ゆうらん船のわびさび革命とでも言おうか。本作で最も特筆すべき点は、本来の意味のエモさと重なる泣きの視点だ。簡単に言うとブルースへの接近である。本作での革命とは、泣きの琴線に触れる為にブルージーに表現することにあった。アップデートしていく日本のロックとの融合によって、ブルース感の顕在化に至ったのだろう。今後船は、消せない涙の渦を持つ日本のバンドとして舵を切るのかもしれない。