DISC REVIEW

pinoko

『Melancholy − EP』

 

―人の絶望を笑うな パート2―

 

癌のように侵食していく悲しみをポップに昇華してpinokoは歌い、ライムする。君は“赤い糸”の正体を見たか。

EPの4曲は、トラップ・ミュージックな“赤い糸”、オルタナR&Bな“I'm sorry”、ネオソウルな”Sniff”、90s R&Bな”again”と、トラックとしては2021年の時代性を感じる音が鳴り、リリックも現代的。しかし、歌から醸し出される悲しみは昔からそこにある樟脳の様に匂う。

ニルヴァーナが1991年に“スメルズ・ライク・ティーン・スピリット“を歌った悲しみの匂いは未だに残っている。その香りは現在のポップ・ミュージックと混ざり合い、香害のように続く。

血液から癌の匂いを嗅ぎつける線虫がいる様に、悲しみの匂いを嗅ぎつけるヤツもいるのだろうか。まあ、そんなものに頼るまでも無く、pinokoの音楽は悲しみを嗅ぎつけ、あなたの赤い血に線虫のごとく入り込む。

彼女の音楽を聴くと、自らが悲しみに侵されている事に気づき、救いを求める。実はそれ自体がpinokoの音楽にある救いでもあるのだ。