DISC REVIEW

CRYAMY

『#4』

ーCRYAMYは決して埋める事のできない絶望との距離を歌うー


《「君のために生きる」と言う君のためだけに出来る限り》“WASTAR”の歌詞が、『赤盤』で示した、目の前のあなたを救うために変わる、というカワノの姿勢の次の一歩である事は間違いない。ひょっとしてCRYAMYはこの言葉を十字架に一点突破をするつもりなのか。彼が作り出す、君のために生きると決めたロックとは一体何なのだろう。

CRYAMYの強みとは「世界」「月面飛行」の様な世界観を体現出来るところにある。ただ、バンドとしてバランスを取るため、本作のように、4つ打ちやハードロック、ポストグランジの側面を持っていても、エモ・パンクなカテゴリーでサバイブする事は正しい選択。もちろん、その中にいるカワノたちは異端な存在となるが、むしろ、そういう界隈に居てくれる事が救いになるようなバンドだと思う。

いや、そもそもロックバンドの在り方として正解はひとつではないだろうと言うのはごもっともである。パブロ・ピカソのように急転直下な才能の進化をして朽ち果てるのがいいのか、SDGS的に持続可能なロックバンドを目指すのがいいのか、誰にも分からない。ただ、今のCRYAMYにはまだ、どちらかの可能性も残されている事は確かだろう。

でも今回ようやく分かった事が一つある。絶望を引き合いに出してきた日本のバンドは、必ず絶望感を放出してそれをリスナーが受け取って完結していた。しかし、カワノの生み出す絶望とは、そもそも出発点が彼自身に内在したものでは無かった様だ。つまり、彼と絶望との間には確かな「ディスタンス」があり、彼が歌いたいのはその絶望の根源ではなく、その決して埋める事のできない距離自体の絶望であったと考えられる。「君のために生きる」はその距離を無くす為の鍵となる言葉だろう。実はその先に、このバンドにしか描けない絶望の再定義の答えが待っているのかもしれない。